岡田あーみん(ギャグマンガ家)
代表作
「お父さんは心配症」
「こいつら100%伝説」
「ルナティック雑技団」(いずれも集英社リボンマスコットコミック刊行)
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『変態マンガ家』とのレッテル貼りが目立ちますが、この人の作品のギャグセンスは一級品でした。確かにブラックなネタが多かったのですが、それも現在だったら週刊ジャンプでふつうに見られるようなレベルであり、非難されるほどの物ではありません。
一説にはこの変態マンガ家とのレッテルを本人が忌み嫌い、それ故引退してしまったとの話もありますが・・・。
彼女の不幸は活動時期にあったのではないかと考えます。
(1)「ちびまる子ちゃん」との競合
今や大ベストセラーマンガになってしまった「ちびまる子ちゃん」。初期の雰囲気は好きなんですが、だんだん感動ストーリー路線になってしまい、初期のレギュラーキャラとの乖離が激しくなってしまい、私としては手放しで褒め称える気にはならない作品でありますが・・・とは言え名作と言えるでしょう。
岡田作品の不幸のひとつはこのお化けマンガと連載時期がかぶってしまったことにあると思います。けっこうブラックなネタでもそのほんわかした画風でくるんでしまった「まる子」。それに対し、シュールでブラック、そして笑えるギャグをそれにマッチしたやや粗い勢いのある画風で表現してしまった岡田作品。これが少年誌ならあまり問題はなかったと思うのですが・・・連載は最盛期の「りぼん」。少女読者からどちらが支持されるか言わずもがなでしょう。
せめて「まる子」が連載されていなければ、かなり印象に残る作品として独自の地位を確保していた可能性は残ります。
「ルナティック雑技団」では少女マンガ路線的な端正な絵柄でその実、「お父さん」以上にブラックなネタを展開し、この先が期待されたのですが・・・。
(2)時代の先を行きすぎた
「銀魂」みたいなマンガがアニメ化されたりする時代です。現在であっても(掲載誌さえマッチすれば)岡田作品のようなパワーのあるギャグマンガは十分通用するでしょう。
逆に言えば、あの連載当時は時代がそこまで進んでいなかったとも言えます。
登場が10年早すぎたマンガ家だったのかも知れません。
(3)ダメダメ過ぎたドラマ化
先日ドラマ化された「ハチミツとクローバー」は原作の雰囲気がさっぱり残っていなかったため酷評に晒されましたが・・・「お父さんは心配症」のドラマ版もその改竄ぶりはいい勝負でした。
家事全般で万能の佐々木父を大地康夫が!そして家事がまったくダメな安井さんを美保純が!
いや、大地康夫は悪くないのです。あのキャラを演じられる俳優といってもパッと思いつける原作ファンも多くはないでしょうし。
むしろその設定の改変ぶりにこそ頭を抱えました。
常識的な娘思いの父親なんて・・・常識的なキャラに主人公を設定してあのハイテンションなマンガを映像化できる訳がありません。ぬるま湯のようなドラマに成り果ててました。
ドラマを見てから原作を読んだ方も原作ファンと逆な意味でショックだったでしょうね。
彼女の作品は傑作ギャグマンガばかりです。これは太鼓判が押せます。
しかし掲載誌とその発表時期が悪すぎました。
作者のその後の消息もまったく不明です。(少女マンガ家にはこのパターンがけっこう多いのですが。結婚引退もかなりあるようですし。)
願わくば復活、それがダメでも未収録作品の刊行を切に望みます。 |
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横山えいじ(マンガ家・イラストレーター)
「スクランブル効果」
「ルンナ姫放浪記」
ハヤカワ文庫(SF)での挿絵・表紙イラスト多数 |
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月イチでこの人のマンガが読めた時代もあったんだよなーと感慨に耽ります。
その掲載誌・月刊チャンピオンの隆盛ぶりも今では30代以上の人間しか知り得ない事実となりつつありますが。
当時、SFネタをさっぱり理解できないでいた私にも面白く読むことが出来たのですから、氏のマンガセンスは大したものだったのでしょう。むしろ藤子不二雄のごとく、児童マンガ向けの資質があったのかも知れません。絵柄もやわらかく、ユーモアにあふれていますから。そして読みやすい。
そして独特のSFマインド。
棒に引っかかって転ぶタイムトラベラーとか、内職仕事ばかりしている家事ロボットとか。このセンスは小説のイラスト仕事でも存分に発揮されており、原作が持っているイメージを増幅しているケースも多々あります。
以前は梶尾真治作品のイラストも多数手掛けられていましたが、梶尾氏作品の傾向変化もあってか見かけられなくなってしまい、非常に惜しい。
残念ながら、この方は非常に寡作のマンガ家です。
連載がSFマガジンに月数ページのみなものですからこれが1冊になるまで長いこと長いこと。
最新刊は何年前に出たっけ?というようなペースです。
しかし油断をしていると「でじたる小学校日記」のように思いがけないところから刊行されていたりするので注意が必要な、実に読者泣かせのマンガ家でもあります。
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えにぐまなみ(マンガ家)
「酸素ルーム」
「パラダイス・エッグツアー」
「よよぎ2(よよぎの2乗)」(すべて、ぶーけコミック)
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えー、先にお断りしておきます。
この方のお名前、「えにぐま・なみ」として話を続けます。
もしかしたら「えにぐ・まなみ」かも知れないのですが・・・ミリタリーマニアとしては『エニグマ』(第2次大戦中のドイツが誇った傑作暗号製作機)という語感の方が力強く感じてしまうもので、「えにぐま」と認識していました。まあ作者のコラム表題も『ひょうたんからえにぐま』となってますし、「えにぐま」で一文節なのでしょう。
前2者とは違って、非常に力があるのに語られることすら稀な作家さんです。実にもったいない。消息はまったく不明です。
岡田あーみん氏は伝説のギャグマンガ家として語り継がれていますし、横山氏はまだまだ現役です。
しかしえにぐま氏は・・・ネットで検索掛けてもさっぱり引っかかってこないどころか、古書店で彼女の作品を見かけること自体がまずありません。
すべては掲載誌の運命がなせる業(ワザ)だったのでは。
非常に明るいかわいらしい絵柄で、さわやかなかつ味のあるラブコメディーを描ける作家でした。(メガネ男率の高さではながののりこ氏とタメを張っているかも知れません。)なにより読後感の爽快さは並外れております。グイグイとハッピ−エンドに持っていく手腕は強力です。
どの作品もハズレがないという凄まじい打率でしたし。ただ惜しむらくは長期連載がないこと。これは当時の「ぶーけ」の事情も絡んでいるのかも知れません。
古書店を回っている方ならご存じかも知れませんが、「ぶーけ」コミックは大判と通常サイズの2本立てでした。名作の誉れ高い「永遠の野原」とか「船を建てる」は大判です。こっちはけっこう今でも流通してますね。それに対し、通常のマンガサイズの単行本はあまり多くありません。あの独特の背表紙をまったく見かけることの出来ない書店・古書店は珍しくなかったのです。
そもそも「ぶーけ」本誌自体が姉妹紙「りぼん」「マーガレット」に比してマイナーだった感もぬぐえません。たぶん出版社としては「マーガレット」「りぼん」卒業層を読者に取り込みたかったと思われるような、やや年齢設定高めの作品を掲載してました。
ただ、その後の「マーガレット」ファミリーの増殖ぶり、特に本誌を喰ってしまった「別冊マーガレット」の躍進ぶりは「ぶーけ」の存在感まで霞んでしまうようなものでしたから。早々にあのやや小振りで分厚いマンガ誌が書店から消えてしまうのも仕方なかったのかも知れません。それと看板マンガの不在も大きかったかも知れませんね。ややマニア好みの作品ばかりでしたから。(私は大好きでしたが。当時、本の厚みと濃さではアフタヌーンといい勝負だったような印象があります。)
たぶん、えにぐま氏も「別マ」あたりで掲載されていれば、知名度もまるで違ってきたのではないかと思います。作風もそれほど乖離してませんしね。やや濃厚な作品が多かった「ぶーけ」内ではスポットライトが当たりにくかったのかも知れません。おまけにあの単行本の扱いでは・・・知名度が上がるわけがありません。あまりに悲運すぎます。
「酸素ルーム」あたりがドラマ化でもされれば評価もまた変わってくるのではないかと思うのですけどね・・・。
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稲見 一良(小説家)
『ソー・ザップ』
『ダブルオー・バック』
『セントメリーのリボン』
『花見川のハック』(絶筆) 他
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故人です。よってもう、新作を読ませていただくことは出来ません。
私が彼の作品を知ったのは亡くなって間もなくだったので悔しい思いをしたものです。
その悔しさも「もう読めん」というものもありましたが、「冒険小説好きを自認していたクセに、今までこれほど良質な冒険小説群を見逃していたとは!」という思いの方が強かったかも。世間の評価も高くないですね、未だに。その完成度を考えればもっと知名度があって当然かと思うのですが・・・。
私もたまたまアームズマガジンの冒険小説読者のおすすめ特集で知ったくらいでしたから。
ハードボイルドも冒険小説も書き手は一昔前よりも格段に増え、また質も上がってきています。少なくとも大藪春彦ばかりが持ち上げられていた時代ではもはやありません。(ちなみに私はアンチ大藪派なのでファンの方々、申し訳ないです。)
しかし、そういう時代になっても、日本の山野を舞台に狩猟に携わる男やイヌたちの潔い生き様を描ける作家は稀有な存在でした。やはりこれはハンターにしか書けないことだったのかも知れません。少なくとも動物や銃器の資料を読んで知ったつもりになって書けるような小説ではなかった、ということですな。
私がガンマニアと言うこともありますが、猟銃の描写は真に迫っています。どうも氏はライフルはあまりお好きではないようで、その活躍は散弾銃にやや偏ってはいますがそれを差し引いても並ぶ者がいないのではないかと。
そして猟犬。山林で頼りになり、心の支えになるのは銃でも人間でもなく、実はイヌであるという側面を見事に描き切っていますね。
また獲物となる鳥獣に対する造詣の深さは当然のこと、狩る者でありながら動物に対する愛情もなまじの動物愛護主義者などよりも伝わってくる作品ばかりでした。
そう言えばムツゴロウ批判と思しき作品もありましたね。なるほどと頷けます。
それと登場人物。悪役は除いて、タフでワイルドでありながらも実に知性的。ややパターン化する傾向はありましたが、それもハラハラしながらも安心して物語を追える要因の一つだったと思っております。
惜しいのは前述したようなキャラクターの類似性と、軍用火器類に対する誤解が散見される部分。猟用銃器に対しては博識なのですがサブマシンガンとアサルトライフルを混同するような記述があったりするのは少々残念です。
人によっては日活の無国籍映画のような時代・社会背景にリアリティを削がれるように感じるかも知れませんが一種の童話だと思えばよろしいかと思います。『男は旗』とか『ソー・ザップ』は完全に「大きな男の子のための童話」ですな。(大きなお友達対象、ではないことに注意。)
氏の作品は絶版が多く、古書店では『セントメリーのリボン』が発見しやすいものの(盲導犬がテーマになっていること、そしてドラマ化されたことも影響しているかも知れない。)、それ以外はなかなか見つけにくいです。特にエッセイ『紐の帖』などは稀覯本とは言い過ぎかも知れませんが、まず見つかりません。ネット通販でも数倍の価格になっております。 |
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